当社はもともと、製本作業などに使う断裁機用定規や裁断板を取り扱う樹脂加工の老舗メーカーです。
お取引先も製造業に関するところばかりで、はじめは食品業界のまな板とは縁もゆかりもありませんでした。
しかしあるとき、たまたまお客様から「樹脂の加工ができるなら、キズつき汚れたプラスチックまな板を削ってキキズつき汚れたプラスチックまな板を削ってキレイにしてくれないか」と相談を持ちかけられたんです。
当時は、社内の誰もまな板の知識を持っていませんでした。
ですがプラスチックを削ったり磨いたりするのは大得意でしたので、「よし、やってみよう」と引き受けました。
そしてあずかったまな板を、樹脂加工の技術を最大限発揮して、ピカピカつるつるにしてお返ししました。
しかしまな板をお渡しすると……なんと相手の方から、ものすごく怒られてしまったんです。
今となっては当たり前のことなのですが、プラスチックまな板は、滑り止め加工がないと板の上で食材が滑って満足に使うことができません。
そのため喜んでいただくどころか、「こんなまな板は使えない」と強くお叱りを受けました。
思えば、これが当社のまな板づくりの出発点でした。
もしこの時、削った仕上がりが無難で、クレームもなかったなら、「お得意様への軽いサービスのひとつ」で終わっていたかもしれません。
ですが樹脂の加工でお客様を満足させられなかった悔しさが、私たちの職人心に火を点けたんです。